乳房アトラス〔第4版〕〜コンパクト超音波neoシリーズ

改訂版について

 改訂の柱は日本乳癌学会「乳癌取扱い規約 第18版」への準拠.それに伴い,構成,症例,解説が全面的にアップデートされました.内容の全面的な見直しを経て,症例はさらに的確に,画像はさらに美しく,解説はさらに明快に磨き上げられています.また,「基礎」の項目は検査に必要な内容に絞って整理され,その分,症例が拡充されました.
 さらに読みやすく充実した定番書として,乳がんの検診,診療を行う施設に勤務する多くの医師,技師の皆さまにご活用いただける一冊です.

第4版の序

 本書の初版に相当する「乳房・甲状腺アトラス」がベクトル・コアから出版されたのは,今から30年前の1993年である.その11年後の2004年に「乳房アトラス」,さらに11年後の2015年には三訂版,と順調に改訂を重ね,内容も少しずつ充実させることができ,自分でも満足していた.ところが,その3年後の2018年に発行された「乳癌取扱い規約18版」で,新たな乳癌の組織型分類が提唱され,乳房アトラスの内容と齟齬が生じることとなってしまった.そこで,速やかに内容を書き換える必要があると,ベクトル・コア編集の中田雅章氏と打ち合わせをしていた矢先,なんと2020年の春に新型コロナの影響もあり,同社が倒産するという予想外の事態を迎えることとなった.改訂版の計画は,あっけなく砕け散ってしまったわけである.しかし,2022年になると中田氏が新会社メディフレックスを立ち上げ,再び私に声をかけてくださった.当然ながら目標は「乳癌取扱い規約18版」に準拠した内容に改訂することであったが,書店から約2年間消えていた三訂版を一刻も早く復活させる必要もあり,古い内容のままであることは不本意であったが,まずは新装三訂版を世に送り出す運びとなった.「乳房アトラス三訂版」と同じ内容のものが,なぜ異なる出版社から「新装三訂版」として発売されたのかを不思議に思われた方も少なからずいらしたと思う.
 さて,三訂版を出した時期とは,フリー超音波検査士である私の日常勤務のパターンも少しずつ変わり,近年では川口工業病院乳腺外科診療所が主たる勤務先となっていた.そして,何よりも嬉しく思えたのは,そこでの病理診断が,かつて癌研病院で時間を共にした秋山太先生の手によって行われているということであった.私が検査した症例が最終的に何であったか,心躍らせながら秋山先生によって記載された病理報告書を見る日が続いている.本書に掲載されている病理組織像の撮影も秋山先生にお願いした.また,院長である古澤秀実先生には,日頃,私が疑問に思ったことを遠慮なく質問させていただいている.お忙しいなか,乳腺に限らず広く医学全般に関する内容までも丁寧にご教授いただいており,いつも感謝している.この場を借りて改めてお礼申し上げる.

見本ページ

▶ 基礎表示法
▶ 正常乳房〜正常乳房
▶ 良性疾患〜嚢胞
▶ 悪性疾患〜浸潤性乳管癌(腺管形成型)
▶ 悪性疾患〜浸潤性乳管癌(硬性型)

目次

【第1章 基礎】
診断装置
走査法
表示法
所見と用語
診断プロセス
【第2章 正常乳房】
正常乳房
妊娠・授乳期乳房
【第3章 良性疾患】
嚢胞
乳腺症
線維腺腫
葉状腫瘍
過誤腫
乳管内乳頭腫
乳管腺腫
乳腺線維症
放射状瘢痕・放射状硬化性病変
乳腺炎
女性化乳房症
豊胸術後乳房
乳腺外にみられる良性疾患
【第4章 悪性疾患】
乳癌の組織学的分類
乳癌の超音波画像
乳癌にみられる付随所見
浸潤性乳管癌(腺管形成型)
浸潤性乳管癌(充実型)
浸潤性乳管癌(硬性型)
浸潤性小葉癌
粘液癌
非浸潤性乳管癌
稀だが知っておきたい乳癌
男性乳癌
【第5章 乳腺リンパ節転移】
領域リンパ節の分類
領域リンパ節の描出
 参考文献
 索引